Summary
Full Transcript
落語「天狗裁き」を現代風にして、#やさしい日本語 #SimpleJapanese でリライトしました。 スクリプトー------------- ある日、男が昼寝をしていました。 「あら、この人、ニヤニヤ笑っているわ。どんな夢を見ているのかしら。夢の中で浮気でもしているのかしら」 奥さんが言うと、夫は目を覚ましました。 「あ、おはよう」 「おはようじゃありませんよ。昼寝してニヤニヤ笑って。どんな夢を見ていたの?」 「どんな夢? ううん、覚えていないな」 「嘘。私に言うことができない夢でしょう。浮気でしょう」 「違うよ。本当に覚えていない」 奥さんは何度も聞きました。でも夫は本当に覚えていませんから、答えることができません。そこへ、大家が来ました。 「どうしましたか。また夫婦喧嘩ですか」 「ああ、大家さん。聞いてください」 妻は大家に事情を話しました。 「夢は大抵、目が覚めたときに忘れますよね。覚えていないから、話すことができない。しょうがないでしょう」 「絶対に嘘です。他の女の夢でしょう? 白状して」 「あなた、浮気しているんですか。悪い人だな。浮気相手の夢じゃなかったら、奥さんに話してもいいでしょう」 大家はすっかり怒って男に言いました。男は困りました。 「そうじゃない、そうじゃない。覚えていないだけです」 「そうですか、わかりました。こんなに悪い人だとは知らなかった。悪い人に貸す部屋はありません。明日引っ越してください」 「はぁ?! なにを言っているんですか、大家さん! 無茶苦茶ですよ!」 3人は、すっかりケンカになってしまいました。それで、みんなで裁判所へ行きました。 裁判官は事情を聞いて、びっくりしました。 「えっ、夢の話をしないから、部屋から追い出す? そんなバカな話はありません。大家さん、落ち着いてください。そんなことは法律違反ですよ」 裁判官が言いましたから、大家と奥さんは黙って帰りました。男はホッとしました。 「助かりました。ありがとうございます」 「いいえ。これが私の仕事ですから」裁判官は男を見て、言いました。「それで、どんな夢だったんですか。私は聞いてもいいでしょう?」 「だから、無理ですよ。本当に覚えていませんから」 「なに? 裁判官の質問に答えないのか。逮捕だ」 「どうしてですか! みんな無茶苦茶だ!」 警官が来て、男を逮捕して留置所に入れました。 「どうして…」男は泣きました。そのとき、不思議な風が吹いて、気が付くと男は知らない所にいました。目の前に、天狗がいました。 「て、天狗?!」 「おまえ、つまらないことで留置所に入ったな。可哀そうだから、出してあげた」 「ありがとうございます」 「いやいや。お前、災難だったな。初めは妻。妻は夫の秘密を知りたい。それはわかる。しかし大家と裁判官が、どうして他人の夢の話を聞きたいのかね」 「そうなんですよ。無茶苦茶ですよ」 「…それで。そんなに面白い夢だったか? 私は人間じゃない。人間じゃない私には、話すことができるな?」 「無理です! 覚えていません」 「天狗を舐めるな。今すぐお前を潰してもいいんだぞ」 天狗は怒って、大団扇を振りました。すると、強い風が起こって、男の体を押し潰しました。 「痛い、痛い。天狗様、やめてください!」 「…ちょっと、あなた。どんな夢を見ているの?」 ー------------おわり
