Summary
Full Transcript
数年ぶりの帰国翌日に浅草で花見をしていたら発見した看板より スクリプトー------------------ 東京の浅草、浅草寺は、飛鳥時代にできた古い寺です。その頃、このあたりは何もない荒地でした。北へ向かう一本道があって、古くて小さい家が一軒だけありました。若い娘と、老婆が住んでいました。 ある日、疲れた旅人が一人、その道を通りました。美しい娘が家の前にいました。 「すみません。今晩泊まる宿がない。一晩、泊めてください」 「ええ、いいですよ。どうぞ」 旅人は喜んで、その家に入りました。 古くて汚い家でした。醜い老婆がいました。 「すみませんね、居心地が悪い家で。でも、外で寝るより少しはマシでしょう」 老婆はそう言って、急いで寝床を用意しました。 布団の上には、枕の代わりに、ちょうどいい大きさの石がありました。 「硬いですが、これしかありません。我慢してくださいね」 旅人は変だと思いましたが、疲れていたから、すぐ寝ました。 夜中。老婆は旅人の頭の上に、大きい石を落としました。それから持ち物を奪いました。 「お母さん。こんなこと、もうやめて」 娘は老婆に頼みました。しかし、老婆は言いました。 「やめて、どうする。やめたら、私たちは生きていけないよ。おまえは生まれたときから、こうして私が旅人を殺して奪った金で大きくなった。今更いい子にはなれないよ」 老婆は旅人の服まで全部奪いました。それから、二人で死体を近くの池に捨てました。999人目でした。 ある日の夕方、娘はぼんやりと荒地を眺めていました。遠くから、若い僧が歩いて来ました。 「どうしましたか。悲しそうですね」 僧が娘に言いました。娘は、この人が千人目だと思いました。 「あのう、旅の方。今晩の宿は…」 「ああ、あなたはこの家の方ですね。すみませんが、一晩、泊めてくれると助かります。それに、もしよければ、あなたが悲しそうな理由を教えてください。力になりますよ」 それを聞いて、娘は言いました。 「じゃ、ひとつお願いがあります…」 その夜、老婆はいつものように、旅人の頭の上に石を落としました。そして、旅人の持ち物を探りました。 「おや、この僧は…」 何かが変でした。その体は、若い女でした。よく見ると、それは自分の娘でした。 「おまえ…、どうして…」 老婆は泣きました。自分が今まで、どんなにひどいことをしていたか、ようやくわかりました。 老婆は娘の体を抱いて外に出ました。そしてそのまま池に飛び込んで、死にました。 人々はその池を、老婆の池、「姥ヶ池」と呼びました。 千人目の旅人は、浅草寺の観音菩薩の化身だったのではないかと言われています。 ー---------------おわり
